老人ホームの入居一時金について知っておこう

老人ホームに入居する際には入居一時金を支払う義務が発生する場合があります。その金額は施設によって異なり、高額なものからリーズナブルなものまでかなりのばらつきが見られます。中には入居一時金が0円というところもあります。

そもそも老人ホーム入居の際に入居一時金を支払う意味とは何なのか、一時金の有無や支払額の格差はどのようにして生まれるのか、また一時金支払いの際に注意すべきことなどについてまとめました。

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老人ホームの入居一時金の位置づけとは

老人ホームに支払う費用には、入居時に支払う入居一時金と月額利用料の2種類があります。その他にも、医療費や紙おむつ代、理容代などの実費がかかりますが、ホームの収入分部は、ほぼこの2種類の料金が中心であるといって良いでしょう。

以前は入居権利金という意味合いが強かった入居一時金ですが、2013年の老人福祉法改正以後は権利金としての受領は禁止され「入居一時金は前払い家賃などに相当するもの」という位置づけに変わりました。現在の入居一時金は、高齢者がその施設を安心して終身利用するための利用料ともいうべきもので、特に金額に決まりはありません。

老人ホームには入居一時金が必要な施設と不要な施設がある

高齢者の入居施設の中でも、入居一時金を受け取れるところは民間の運営施設に限られています。該当するのは介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅やグループホームなど、民間が運営する老人ホームです。

一方、自治体や社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは入居一時金は一切ないため、月額利用料のみで利用できます。

入居一時金返還の仕組みを考える

入居一時金には償却期間があり、一般的には数年から20年ほどといわれています。入居時に一部が償却され、残りは利用年数に合わせて少しずつ償却されていきます。償却期間を過ぎると再度更新が必要な場合もありますし、住み替えや死亡等の理由で途中でホームを退去することになった場合には基本的に未償却分は全額が返却されます。

また、自己都合による契約解除の際にはクーリングオフの適用により、90日以内であれば入居一時金は全額返還してもらえます。従ってホームに不満な点が多くあったり、自分に合わないと感じたりした場合には90日以内に決断するということが大切になるでしょう。

過去には利用者の退去や施設の倒産などにともなう入居一時金の返還トラブルが多く発生した時期がありました。このような事態を避けるため、2006年の老人福祉法改正により入居一時金の保全措置が施設に義務付けられるようになっています。

この「保全措置」というのは、ホームの運営会社が全国の協会団体や金融機関と連帯保証委託契約を結ぶことで、万が一の場合に利用者の利益を守るというものです。2021年4月からはすべての有料老人ホームが一時金保全措置の対象になりますが、それまでの過渡期においてはまだ全部の施設が該当しているとは限りません。関連サイト⇒ウチシルベ:老人ホーム

保全措置対象外の老人ホームの場合には、一時金の取り扱いは各施設によって異なるので注意が必要です。特に高額の一時金を支払うような契約の際には、万が一に備えて入居一時金の内容と保全措置について契約前に一通りチェックしておく必要があるでしょう。

入居一時金の算定方法とは

一般的に入居一時金の算定は、月当りの家賃相当額に想定居住期間をかけ、その金額に想定居住期間を超過した場合に施設が備える金額を加えて計算します。想定居住期間とは平均寿命を参考に入居時の年齢や介護度を加味して設定されたものになっています。

その他に、居室の広さや設備、土地や建物の取得額なども一時金に反映されます。このような一時金の算定基準は重要事項説明書などでの記載義務があるのでよく確認し、その金額が適正であるかを自分自身の目で判断しておきましょう。

算定基準が不明確な場合は施設側に説明を求めることも必要になります。施設側は利用者側に算定の内容や明確な基準を示す義務があるので、疑問点についてはしっかりと説明を求めましょう。

入居一時金の相場とは

ホームの入居一時金は、0円から数千万円までと相当額の違いがあります。入居一時金0円のホームの場合はその分を月額料金に上乗せしてあるので、毎月の負担額が大きくなるケースがほとんどでしょう。さらに、都心と地方では一時金の金額にかなりの格差がありますが、これは各地域の不動産価格に比例しているものと考えられます。

首都圏近郊では500万円から1,000万円が入居一時金の相場だと言われています。老人ホームの入居一時金は月額利用料を基準に算定しており、サービスの手厚さや施設設備の豪華さ、立地条件などがその金額に反映されています。

しかし、必ずしもそれらがすべての利用者にとって必要かというとそうとも限りません。

建物や内装の豪華さよりもアットホームな雰囲気を求める方は多いでしょう。そして、ホームでの居心地の良さや満足度は、施設側の運営方針やスタッフの介護に対する姿勢などに影響される部分が大きいものです。決して「料金が安いから満足度が低い」「一時金が高いから安心できる」というわけではないのが現状です。

従って施設への入居を検討している場合には一時金の額や月額料金にのみ目を向けずに、実際に施設を見学してスタッフや利用者の雰囲気を観察しておくことが重要になるでしょう。施設の責任者から直接、運営方針などを聞いておくことも大いに参考になります。

さらに、今後は地価の安い地方の老人ホームに入居するという選択も必要になるかもしれません。

利用者のニーズに合った施設をみつけよう

かなり高齢になってから老人ホームに入居する場合や一時的な施設入居を検討している場合には、一時金がゼロのプランが向いているかもしれません。ある程度月額利用料が高めであっても、トータルでの負担額を抑えることができます。

その他の場合は、基本的に入居期間を長めに設定しておき、しっかりとした資金計画を立てておくことが重要になるでしょう。また、ホームでの生活費は月額利用料だけではなく、医療や介護にかかる費用も相当額必要になります。

トータルで月にどのくらいの費用がかかるのかを、よく考えに入れておきましょう。入居金はその性質をよく知った上で支払うことが重要です。ずっと同じホームに住み続けることを前提に考えていても、実際の寿命や健康寿命は誰にもわかりません。

ですから、老後の蓄えはさまざまなケースを想定して無理のないように使うことがとても大切になります。家族や親族、老人ホームや老後設計に詳しいファイナンシャルプランナーなどに相談するのも有効な手段だと言えるでしょう。